「壁の耳」

  • 2016/06/21(火) 12:14:09

『東京新聞』の生活家庭面に「あけくれ」という読者投稿欄があるのをご存知でしょうか。
2016年6月18日(土)朝刊の当欄に、百々亭さてんさんのコラムが掲載されました。

新聞の読者投稿欄に一日何通くらいの投稿があるのか知りませんが、
日々、膨大な数の記事を読むであろう記者の目に止まったということは、
キラリと光る何かがあったのでしょう。

社会人落語家の日常をえぐり出す(?)珠玉の一遍をどうぞお楽しみください。


「壁の耳」

 趣味は落語だ。友人から寄席に誘われたのがきっかけで、はまった。
それも聴くだけでなく、私自身が落語を演じるのだ。
 仕事が休みの日に、時間を惜しんで練習する。
所属する社会人同好会の発表会が定期的にあるから、怠けてはいられない。
 まずは正座して、大きな声を出す訓練から始める。
何より健康に良いし、ストレス解消にもなる。
筋立てを覚えるのは厄介だが、脳の刺激となっているに違いない。
 謎かけのような短いものから始めて、今は名作の「時そば」に挑戦中。
屋台のおやじさんと客の会話を演じながら、
左手で丼を持ち、箸に見立てた扇子でそばをすする。
 「なんでこんな苦労を」と思いながら悪戦苦闘しているが、
初の発表会で、お客さんにどっと笑ってもらった経験が、私の支えになっている。
 今日も壁に向かって練習だ。壁はちゃんと聴いてくれますよ。
「壁に耳あり」って。

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